月光賛歌

月光賛歌

その2の第2章(愛しき光達へ)

第2章
それからまもなくしてエルフの所へ一枚の便箋が届いた。エルフは便箋を開けるなり待ち合わせの時刻を見る。内容の方が大切なのだが、自分の知りたい内容は書いてないので時刻のみを見たのであった。
そして、時間が迫るにつれエルフは焦りだす。
――――――――断られてしまったらどうしようか…。――――――――
不安だけがエルフを追い込む。そして、呼ばれた現場へと向かった。
少女はと言うとエルフの気持ちなど知らず、その場へと向かっていた。自らの将来が決まる場所へ…。
そして、二人が同じ場所に着き、またぎこちない会話が…。
「ど、どうも!!」
「こんにちわ~^^」
「あ、あの~…えーっと…(自分から聞くのは図々しいぞ俺!!)」
「『答え』ですよね?」
「え”!!あ、えーっと、その~…はぃ…」
「それを言う前に、一つ聞きたいのですが良いですか?宜しいでしょうか?」
「え?ど、どうぞ…(何だろうか?彼女の聞きたいこととは…?)」
「何故、こんなどうしようもない私を選んだのですか?」
「え!!?(素で言われると…困る…)……そ、それは、貴女の眼を見て「この人だ!」と思ったからです。」
「眼…ですか?」
「はい。あのときのあの場での眼、とても輝いていて何かを達成しようと言う眼をしていたのでついつい…。」
「そうなんですか…。質問有難うございました^^」
「い、いえ!!ドンドン質問してください!!」
「ふふふ、それでは本題に入りましょうか^^?」
「は、あ、はい!!」
「もう、私の答えはご存知ですよね?」
「え………?(何を言っているんだろう?)」
「あの質問でもう答えはご存知でしょう?……ふふふ」
「え、…………あ!!(そういうことか!!)」
「ふふふ…お分かりになって頂けましたか?^^」
「は、はい、勿論ですとも!!(あ、は、アハハハハ!!)」
「良かった~^^生涯を共にする人ですから、慎重に選ぶことは母から散々言われていましたから、貴方なら……ね?」
「あ、あははは!!も、勿論!!アハハハハ!!!!」
「ど、どうかしましたか?」
「え?いやいや^^こんな俺を受け入れてくれる人が居て!!もう、嬉しくってさ!!ハハハハ!!(壊れたな…俺…)」
「そうなんですか?ふふふ^^嬉しそうですね^^?」
「嬉しすぎて!もう貯金全部下ろして君に全部使ってしまいたいくらいだよ!!^^」
「えぇぇ!そ、それは止めておいた方が^^;;;」
「冗談だよ^^でも、冗談じゃないかも!!」
「ふふふ^^」
「はははは^^」
………そして、笑いが止まった頃は既に陽は傾いていた…。
それから、どれ位経ったのであろうか、エルフは少女を連れて自分の産まれ故郷であり、全てのエルフの集まる場所へ向かった…。

その場所は決して人間が入ることを許されない場所。
その掟を破って入った二人、その行為を出迎えたのは…森の全てでありエルフの全ての母である「森とエルフの母」エルフたちは彼女を"マザーツリー"と呼んでいる。
その彼女の前に立たされた少女は固まって居るのかと思えば、彼女に一礼をした。その少女を見た彼女は隣に居る我が子を見てこう告げた。
「よく戻られましたね、私の若葉よ。……ん?そこに居る子はどうしたのですか?はぁ~…エルフの掟を破ってその子を連れてきたのですか?…まさか…掟を忘れたと言うのですか?」
彼女の喋り方は落ち着いていて、それで居て釘が刺さるような喋り方をした。エルフは「いつもはこんな感じじゃないんだよ」と少女の耳元で囁いた。
「戻ってまいりました…。マザー俺は決して掟を破ってこの地へ人間である彼女を連れてきたのではありません。この彼女を愛し、アインハザードの祝福を二人で受けるべくこの地に帰ってきたのです。」
「しかし、人を入れたことは重大な罪ですよ?それは分かっているはずでしょう?その少女を思う事は良い事です。止めようとは決してしません。しかし、この地へ連れてくると言う事は覚悟を決めたからこそ連れてきたのでしょう?違いますか?」
「勿論!重大な罪も彼女や俺の肩身が狭くなるのも分かっています。そのことは二人でちゃんと話し合った。しかし、この地ではない場所で二人が共に居れば、この地で行われるかもしれない危険な事よりも、もっと恐ろしい事になりかねません!!だから、俺はこの地に彼女を連れてきたのです。」
「……貴方も、言うようになりましたね?成長したのでしょう。喜ばしい事です。本当に覚悟があるならば即座に貴方方が行いたいと言う儀式を行いましょう。」
「マザー…。ありがとう^ー^」
「可愛い若葉の為です。しかし、何度も言うようですが本当に良いのですね?」
「勿論ですとも」
「ならば、儀式を即座に執り行いましょう。準備が必要ですので、若葉よ言葉を覚えなさい。…そこの人の子よ。」
「………は、はい!!」
「危険を顧みずこれより頑張ってくださいね」
「はい、頑張ります」
「フフフ^^」そんな二人の会話を横目で見ていたエルフは珍しく笑うマザーツリーを見て微笑んでいた。
――――――――数時間後――――――――
「覚えたぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!」大きな声が聞こえる。それを外で聞いていた少女は驚きを隠せない。まるで『え?何が起こったの?』という表情で、夫になるべく人が居る部屋へ向かうと…。
「婚儀の台詞を覚えた!!これで準備万全!!」胸を張るエルフに対して、やわらかく微笑む少女。この後二人に訪れる生活を未だ分かるはずもなかった。
―――そして………――――――
「これより、エルフの森で育った若葉と幼き人の子との婚儀を執り行う。」マザーが厳しく言う。まるで二人に最後の最後まで「本当に良いのですか?」と聞いているように…。
「では、若葉よ儀の言葉を…。」
「はっ!…森とエルフの母の前、及びアインハザードの前にて我、グレイスと最愛の妻となるべく女性……。あれ?」エルフが途中で儀式を止めてしまった…。
「どうしたのですか?」マザーツリーが不思議そうに問う。隣に居る少女はエルフの顔を見て『どうしたのだろうか?』と言う顔をしている。
その時であった、エルフが少女に向かって「名前聞いてなかったよね?」と言えばマザーツリーは呆れた顔をしてそっぽを向いてしまった。少女はこの場での質問に顔を朱色に染め俯いてしまった…。
そして俯きながら「えーっと、私の名前はレイナって言います。今になってごめんなさい^^;;」と言った。エルフは気を取り直して
「森とエルフの母の前、及びアインハザードの前にて我、グレイスと最愛の妻となる女性レイナ、一つとなるべく祝福を受ける為、森とエルフの母の下へ戻った。森とエルフの母よ我と最愛の妻の祝福を認めよ。どんな過酷な事も二人で乗り切ると誓おう。さぁ、アインハザードよ我等を認めよ。」
その言葉を言い告げたグレイスは静かに祝福を与えられる事を願った。同じくレイナも静かに認めてもらえるよう願った。しかし…人とエルフの婚儀など前代未聞のせいか、なかなか祝福を与えられる事がなく。二人とも『ダメダ…』と思った矢先だった。
白い光が二人を包む。それと同時に、マザーツリーから…。
「どうやら、あなた方はアインハザードに認められたのですね。おめでとうございます。心より祝福いたします。」その瞬間グレイスはレイナに抱き付いた。全く正反対の状態のレイナ、抱き付かれ呆然と立ち尽くしている。そして、レイナはマザーツリーにこう告げた…。
「ありがとうございます。私達は今日より、幸せに暮らし、この日の事を決して忘れません。」そう言うとグレイスは叫びと同じ声の大きさでマザーツリーに言った。
「マザー!俺は彼女を幸せにしていきます!そして、二人で森にひっそりと暮らして生きます!」マザーツリーの顔が微笑から厳しい顔になった。
―――――――…森に暮らす。――――――――
その言葉が顔を変えた原因。森に暮らすという事は、守護者から生涯を共にする女性を守り抜くという事、毎日が危険と隣り合わせであるという事…。そして、他のエルフ達から酷い事を言われる恐れがあるという事…。
「グレイスよ…。森で暮らすと言う事はどういう事かを分かっているのですね?」マザーツリーは「訂正せよ」という言葉を遠まわしに言った。しかし、グレイスの眼は言い放った時と変わらず、輝いていた。例えどんな事が自分たちに振り掛かろうとも知らず。


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